設立趣意書

 新幹線の全線開業、政令指定都市の施行を契機として、未来の熊本を創る新しい創造の時代が始まります。私たちは、未来の熊本を創造する力は、「公民連携」によってのみ生み出されるものと確信しています。又、地域の創造には長い年月を要することから、次世代、次々世代との連携、「世代連携」も必要です。

 そこで、私たちは「民」のサイドの終結点の一つとなるべき組織として、又、世代連携を保持するための持続可能な組織として、一般財団法人「創造くまもと」を設立することといたしました。この一般財団法人は、実績を上げて早期に公益財団化することを目ざしています。

 以下、「創造くまもと」の設立の趣旨について説明いたします。

 熊本は、経済的発展、都市インフラ整備等において福岡に水をあけられ、新幹線への対応でも鹿児島に後れをとりました。そのためか弱気の見方が広がり、新幹線の全線開業についても、「空洞化論」や「通過駅論」が囁かれる始末です。私たちは、強い決意でこの種の消極論を排し、これからの厳しい地域間競争に勝ち抜いていかなければなりません。

 未来の熊本を創造する仕事は、息の長い仕事ですが、私たちは、その一つの到達点として、道州制の実施に際して、熊本市が九州の州都となることを当面の目標としています。その場合、州都となるのは熊本市ですが、県下全市町村の区域が州都を支える地域として、いわば「州都圏」を構成するものと理解します。熊本のこの州都圏の地域は、地政的にみて州都として最も有利な条件を備えています。何よりも、熊本市は、沖縄を除く九州の全県から現在でもほぼ一時間半で到達できるという地の利を持っています。私たちは、この事実に確信を置いて、近未来の熊本創造の具体的なターゲットを州都の獲得に設定します。

 道州制が何年後に施行されるのかは分かりません。十年後、あるいは十五年後かもしれません。遠いようで近い、近未来です。それまでの間に、私たちは、熊本市と州都圏の地域を、州都圏にふさわしい地域社会として整備しておかなければなりません。それはどんな地域社会なのか。今後私たち熊本県人が、真剣に検討してコンセンサスを得なければならない問題です。私たちは、州都にふさわしい「品格ある地域社会」を思い描いています。その具体的な姿は、これからの私たちの研究の結果として明らかにする予定です。

 いずれにせよ私たちは、州都に至る厳しい地域間競争を、何としてでも勝ち抜かねばならないのです。

 新しい熊本の創造は、私たち熊本県民自身の発想とイニシアチブによって進められなければなりません。地方分権は、21世紀の滔々たる潮流になりました。道州制は地方分権の究極の姿ですが、その実施までには、国の多くの権能が都道府県に移譲され、同じように都道府県の多くの権限(国から移譲された権限も含めて)が、市町村に移譲されるでしょう。地域行政の主な担い手は市町村になり、市町村が、新しい地域創造の主導権を握ることになります。私たちは、このことを確かめながら、熊本創造を考えてまいります。

 そこで重要なことは、市町村、とりわけ政令市となる熊本市が、十分な政策形成能力を持ち、そこで形成される政策が、国に対しても県に対しても十分に説得力を持つということです。市町村発の政策を県や国が認め、三者の連携関係が築かれていくことが理想です。

 市長村が主導する地域創造においては、市町村行政と地域住民の協働の関係が重視されなければなりません。伝統的な市民参加を超えた「公民連携」による地域づくりが期待されます。そこでは、首長と議会からなる行政の発想と、住民の地域活動から立ちあがってくる民の発想が同等の価値を持って論じられ、公民連携で形成される政策を、公民連携で実現していくのです。新しい「公民連携の行政」は、PPP(Public Private Partnership)として普及されています。本来のPPPでは、地方自治体と地域企業が行政の重要なパートナーとされています。私たちは、一般住民の市民が企業とも連携して大きな役割を担うことが本来の姿だと考えています。

 私たちは、地方分権(地域主義)と公民連携とを、新しい熊本を創造する指導理念として尊重してまいります。公民連携の地域創造では、個人とともに多種多様かつ無数の民間団体及び企業が政策形成過程に参画することとなります。これらの個人、団体、企業との情報交換を密にし、その主張や提案を効果的に政策形成過程に活かしていくためには、公のサイドの企画部門及び事業部門を通ずる政策形成能力を高めていく必要がありますが、あわせて民のサイドでも、必要に応じて個人や団体の提案を集約して、首尾一貫した政策提言を行うことのできる機関 ―シンクタンク― を持つことが有意義であると、私たちは考えています。

 そのような民間のシンクタンクは、州都の獲得を目指す市民運動の拠点の一つであるとともに、各種の住民組織の活動を支援し、講演会やシンポジウム等を開催し、市民のための研修活動を実施するなど、市民のフォーラムとしての機能を果たすことも期待できます。

 この種のシンクタンクは、現在熊本県下にはないようです。かつて県等の出資により設置された「研究開発センター」が、熊本の開発をリードしていましたが、諸般の事情により規模が縮小され、現在は見るべき活動をしていません。福岡県には、県市や大企業が出資、出捐するシンクタンクがあり、地域の発展に寄与しています。熊本県下でも、同種のシンクタンクが設立される向きが多かったのですが、実現しないまま今日に至っています。

 以上のような状況に鑑み、私たちは、新規に一般財団法人として「創造くまもと」を設立することを決意しました。この財団は、公的機関からの出資や補助を仰がず、純粋に新しい熊本の創造を願う個人及び企業からの寄付で運営することとして、公民連携の民サイドの独自性、独立性を保持しようとするものです。

 この財団は、地域住民、ボランティア団体、NPOその他の団体または企業からの政策提言について研究し、政策化して世に問うとともに、その実現を促進することを主たる業務としますが、あわせて、講演会、シンポジウム、研修会、見学会等を実施します。又諸外国との交流事業にも参加します。

 この財団は、一般財団法人として設立しますが、実績を上げ、社会的信用を得たうえで公益財団の資格を獲得し、その後は、地域活動を行う各種団体を支援する基金の設定等も行う予定です。

平成22年4月